プロフィール

daitube

Author:daitube
 「魚突き」ときどき「Bboy」でおなじみのYouTubeチャンネル「DAITUBE」です。

 使用している銛は「2mアルミ銛+土佐銛先」、ウエットは3mmを上だけ着たり着なかったりという軽装。ダンスのジャンルは「Breakin」で得意技はハイチェアです。

 鹿児島市内を拠点に、自転車で旅をしながら魚突きキャンプをしています。主に今年は離島旅にチカラを入れてます。

最新記事

最新コメント

月別アーカイブ

カテゴリ

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

ブロとも申請フォーム

QRコード

QR

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

運び屋と呪われた依頼品②

 十二月十四日の晩、外では大雪が降っていた。

 私はプレハブ小屋の窓ガラスに顔を押し付け、たけやんを待っていた。記念日を大切にするたけやんのことだ。日付が変わるまでには、私の誕生日になるまでには、きっと帰ってきてくれるだろう。そう信じて待っていた。


 不意に睡魔に襲われ、私はだんだんうとうとし始めた。こくり、こくりと小舟を漕ぎ、意識が途切れ途切れになった頃だった。外で、物音がした。

 はっとして私が窓の外を見やる。外には黒い影。闇に溶け込むような黒い影、たけやんだった。

「おかえり、たけやん!」私は急いで戸を開け、たけやんを外よりは幾分かは暖かい小屋の中に招き入れた。すると――。

「えっ?」


 たけやんは前のめりになり、私に倒れかかってきた。


「どうしたの、たけやん?」必死で受け止め、私は問いかけた。しかし、たけやんは何も答えない。代わりに荒い息遣いが聞こえてきた。何やら、苦しそうだった。

 嫌な予感がした。私は力を振り絞って、自分よりはるかに大きな成人男性の身体をどうにかこうにか布団へと運んだ。何とか寝かせて、その姿を見る。その刹那、悪寒が走った。


「たけやん……その傷は……!」

 たけやんは重傷を負っていた。改めて自分の姿を見ると、さっきまでたけやんを支えていた肩や腕が赤黒い血の色に染まっていた。

「どうしたの、たけやん!? 一体、何があったの!?」私は必死に問いかけた。しかしたけやんは何も答えようとはしなかった。

 とにかく手当てをするのが先決だ。私は小屋中からタオルというタオルを集め、たけやんの血を拭った。お湯を沸かし、アルコールに包帯、思いつく限りのことをした。

「たけやん、死なないで!」知らぬ間に、私の目からは涙が流れていた。唯一の家族を失いたくない、その一心だった。怖かった。
いつしかたけやんの呼吸は落ち着き、寝息を立てはじめた。安堵しながらも私は彼の体を冷やさぬよう、毛布をかき集めて被せた。



 怪我の様子から、これはきっとタダゴトではない。一体、何があったのだろうか。得体の知れない恐怖が湧いて出てくる。だが、今は、床に伏せるたけやんを見守ることしかできなかった。


 不意に、たけやんの口が動いた。

「何?」私は耳を近付け、その声を何とか聞き取る。


 たけやんは言った。


「誕生日、おめでとう……」と。

 時計を見ると、時刻は確かに零時をさしていた。







 翌朝、目を覚まして、はっとした。

「た、たけやん!?」寝ずの看病を心に誓っていたはずの私は、知らぬ間に眠りに落ちていた。慌ててたけやんを確認する。


 たけやんは、もう目を覚ましていた。横になったままの格好だが、その表情は苦しそうではなく、しっかりとしていた。私はそれに安堵し、そっと胸を撫で下ろした。


「ねぇ、たけやん――」私は問いかけることにした。「昨日、何があったの?」と。

 たけやんは無表情のまま、ずっと黙りこくっていた。でも、私は答えを急かせるようなことはせず、じっと、たけやんが話す気になるのを待った。


「ゆきな――」

 不意に名前を呼ばれた。

「なに?」と、私は彼のすぐ傍まで寄った。


 たけやんは私の方を見ることなく、こう言った。


「ワシはお前に、ずっと嘘をついていた……」と。

「え?」私はどきりとした。たけやんは突然何を言い出すのか、と。

「ワシの仕事の子だが、コインロッカー巡りと言っていたのは、嘘だ。ワシの本当の仕事じゃない。本当の仕事は別だ」たけやんは言って、大きく溜めてからまた言った。「ワシはな、本当は運び屋なんだ……」

「運び屋?」

 たけやんは頷くと、じっと天井を見据えたまま、またぽつりぽつりと語り始めた。

「色んなものを運んだよ。依頼さえされればどこへだって。もちろん危ない依頼ばかりだよ。そりゃそうだ。誰だって年賀状を出したけりゃ郵便局に頼む。ワシに依頼するのは法律としてアウトなものだけだ」

「そんな……変な冗談はやめてよ……」

「すまん……突然で信じられないのも無理ないな。――だが、本当なんだ。ほら、考えてもみろ。疑わしい点は少なからず有ったはずだ」

「疑わしい……点?」私は言い、今までのことを思い返してみるが、思い当たる節はない。
首を傾げる私に、たけやんは仕方なさそうにまた口を開く。

「まず、月三十万という高収入。単純計算でも一日に一万を稼いでるとして、コインロッカー巡りで一日に百円玉を百個も拾えるか? いや、それ以前に一日に百円玉を取り忘れる人が百人もいるはずない。そうだろ?」

「で、でも……だからって、コインロッカー巡りじゃないにしても、運び屋だったらそんなに稼げるの?」

「映画の『トランスポーター』を見せたことあるよな? 思い出せ。主役のフランク・マーティン演じるジェイソン・ステイサムは良い車に乗っていただろ? あれは運び屋で高収入だからだ」

「た、確かに……」と、私はかつてたけやんと一緒に見た、アクション系のかの洋画を思い浮かべた。一瞬だけ納得しそうになったが、私はまだまだ食い下がる。「で、でも、あれに比べたら三十万はかえって少ない方じゃない! それだけじゃ証拠にならないよ!」

「じゃあ、次にワシの性格だ。ワシが今までにゆきなの誕生日を忘れたことがないのは、期日や時間に異常なほど厳しい運び屋としての職業病なんだ。それにほら、映画『トランスポーター』で主役のフランク・マーティン演じるジェイソン・ステイサムは、時間に厳しく、ルールに忠実だったろ。これに、ワシは重なるではないか。ほら、やっぱり運び屋だ」

「うぅ……で、でも――」

「そして最後にもう一つ。ワシの頭を見てみろ。……確か、映画『トランスポーター』で主役のフランク・マーティン演じるジェイソン・ステイサムは、禿げていただろ。それも額が徐々に後退したタイプの禿げだった。そしてワシの頭――ほらな、これにもワシは重なるではないか。だろ? ほら、やっぱり運び屋だ」

「ほ、本当だ。じゃあ、やっぱり……」

「ああ、そういうことだ。信じてくれるな?」



 私は観念し、こくりと頷いた。どうやらたけやんの言葉は真実であると、そのジェイソン・ステイサムばりの「オデコ後退型禿げ頭」を見せつけられては、認めざるを得なかった。以降、私はこの運び屋のする話を真摯に聞き取ることにした。


「取引場所として使っていたのがコインロッカーだった。依頼主は顔を知られるのを嫌がるからな。ワシは依頼書に同封されているキーを持って、物を預かる。それを運び終え、相手に確認されると、報酬が入る。そういうシステムだった」


 それにしても、今になって自分の仕事について話す彼の真意は何なのだろうか。分からない。でも、たけやんの怪我の原因は、恐らくこの仕事のせいなのだろう。



「依頼品を見ることはタブーとされていた。だが、中を確認しなくても中身に想像のつくケースは多かった。危ない粉、重い銃器、そしてバラバラの死体……。金のために何でもやったんだ、ワシは」


 正直、ショックではあった。そういったお金で私は養われていたのだから。でも、だからといって私は、たけやんを責める気になどならなかった。むしろ、そんな危ない橋を渡ってまで、私をずっと育ててくれたことに感謝すらした。


「ごめんね、たけやん……。ゆきな、たけやんのそんな苦労も知らずに、今まで――」私の目からは大粒の涙が流れ出した。――でも、そんなときだった。外で不穏な気配がしたのは。


「ねえ、たけやん。今、外で物音が――」


「ああ。もう、奴らがここを嗅ぎつけたようだ……」


「奴ら!?」

「ああ。ちょいと、仕事でヘマをやらかしたのがバレちまってな……」


「えっ、たけやん一体何したの?」と私は尋ねたが、たけやんは話している場合ではないとでもいうように、私の質問を無視して、代わりに指示をしてきた。

「いいか、この手紙を持って、隣町の駅にまでいくんだ!」たけやんは言って、封筒を一つ私に押し付けてきた。そして立ち上がり、プレハブ小屋の床板を一枚はがし始めた。
「何するの?」

「いいか、ここに地下通路がある。ここからお前は一人で逃げるんだ。そしてさっき言ったように隣町の駅に行け! そこで待っていれば、ワシの同業者が現れる。そいつに手紙を渡すんだ。そうすればそいつはお前を遠くに逃がしてくれるからな……」

「だったら、たけやんも一緒に――!」私は言った。が、たけやんは首を横に振った。

「奴らを足止めする役がいる」

「そんな……」と口にしたときだ。プレハブ小屋の戸を叩くものがあった。

「奴らが来た! さあ、早く!」

「い、いやだ! たけやんも一緒じゃないと――!」

「いいか、隣町に入ればその先、お前の身にどんなことが起きるかはワシにも分からない。暗闇には気をつけろ――!」



 私は必死に抵抗した。けれども、覚悟を決めたたけやんは強引に私を地下通路へと押し込んだ。続いて床板が被さり、視界からたけやんは消えた。直後、怒声と銃声がその向こうから聞こえてきた。たけやんが死んでしまう! しかし、私は思うばかりで何もできなかった。暗闇に一人うずくまり、震えるばかりだった……。
スポンサーサイト

<< 運び屋と呪われた依頼品③ | ホーム | 運び屋と呪われた依頼品① >>


コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

 ホーム 


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。