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daitube

Author:daitube
 「魚突き」ときどき「Bboy」でおなじみのYouTubeチャンネル「DAITUBE」です。

 使用している銛は「2mアルミ銛+土佐銛先」、ウエットは3mmを上だけ着たり着なかったりという軽装。ダンスのジャンルは「Breakin」で得意技はハイチェアです。

 鹿児島市内を拠点に、自転車で旅をしながら魚突きキャンプをしています。主に今年は離島旅にチカラを入れてます。

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運び屋と呪われた依頼品⑤

 一歩、また一歩、もう一歩……。

 雪の積もる山道を歩きながら、私は考え事をしていた。

(私のせいで、皆死んでしまうんだ……)

 一人で歩む夜は、とても寒くて心細い。つい、後ろ向きなことを考えてしまう。いや、確かに後ろ向きではあるが、事実なのは確かだ。


 この短期間のうちに、人の死ぬ所を余りに多く見過ぎてしまった。いや、直接見たのはジン一人だけだが、ヒロコさんも、そしてたけやんも、きっと私のために死んでしまったんだ。呪われた私のせいで巻き込んでしまったんだ。

 不意に思う。この道は、一体何に向かって続いているのだろう。私はどこへ行こうとしているのだろう。ヒロコさんとの問答の中でも結局それは分からずじまいであった。彼女が教えてくれたのは、この先に三人目の運び屋がいるということ。恐らく、彼女もそこまで私を運ぶという自分の仕事以外は、何も知らされていないのだろう。


 たけやんの受けたとされる依頼の内容を思い出してみる。私が捨て子として拾われたのではなく、依頼の品としてどこかへ届けるべく預かられた存在であると証拠づける事実だ。


 それと今回の依頼は別だと、ヒロコさんは言ってはいた。が、たけやんは仕事で失敗したのがばれ、何者かに襲われた。となると、最期にやり残した仕事を他の運び屋に託したと考えるのが普通か。



――となると、やはり、最終的に運ばれるのは親が望む「呪い相殺の儀式の場」なのだろうか。自分は、顔も知らない親の呪いのために死にに行こうとしているのか。それでは一体、私の人生とは何なのだ。いや、それでもいいかなと今では思う。


「私が生きていたら、きっと多くの人に不幸を招いてしまう……」


 そうまでして生きていたいとは思わない。いや、何より私は、もう疲れてしまったのだ。だって、たとえ生きていても、私はもう一人ぼっち。生きたいと思える訳がない。


 天国で会ったら、たけやんには何を聞こうか。謎や疑問に思うことは沢山あるというのに、どれも怖くて聞けない気がする……。そもそも呪い殺された私の魂は果たして天国へ行けるのだろうか。死んでも一人ぼっちなんて、流石に辛過ぎる……。



 ヒロコさんと別れてから、もう随分歩いた。寒い。そろそろ体力も限界が近づいてきた。意識も朦朧とし、視界も霞む。ついに私は、足を止め、膝をつき、その場にへたり込んでしまった。


 このまま死んでしまえばいい。そうだ、別に親の呪いで死ぬ必要なんてない。儀式で死ななければ、呪いは親へと返るはず。良い気味じゃないか。


「誕生日……」ある言葉が突然脳裏に浮かんだ。「そういえば、誕生日おめでとうって、言ってくれたな……」


 あの言葉は、あのおめでとうは、本当にそう思って言ってくれたの? 天国で会えたらそう聞こう。私は思い、目を閉じた。丁度そのときだった。聞き覚えのある声がした。


「ワシより先に死ぬなんぞ、百年早いわ」と。





 消えかかる意識の中で、私はその声を聞いた。

 懐かしい声、回りくどい言い回し、忘れもしないその人の言葉だ。


「た、たけやん? な、何でここに?」私は顔を上げた。目の前には夜に溶け込む黒い影。見紛うことなきたけやんだ。しかし、何故? もしかしてここは天国か。

「何でって、ほら、三人目の運び屋だし」と、たけやんは私を抱き起こしながら言った。「それより、ほら。あったかい午後ティー」

「あ、ありがとう」と私はついそれを受け取った。「いや、そうじゃなくて、その、何で? 無事だったの?」

「ああ――」たけやんは顔をくしゃっとさせて言った。「ワシはしぶといからな」


 いまいち状況が理解できていない私に、たけやんは次のように説明をしてくれた。


「この国の道路上で一番早い乗り物って何か知ってるか? 答えは救急車だ。スピードはともかく、赤信号は無視し放題、車は抜き放題だからな。ワシはあの襲撃を受けながらも、救急車を呼んで隣町まで運んでもらったんだ」

 たけやんは歩きながら話を続けた。私も歩きながらそれを聞いた。

「二番目に早い乗り物って何か知ってるか? 答えは原付だ。これも渋滞はスイスイ抜き放題、信号では降りて歩行者になって渡れば問題なし。ワシは病院に着いたあと、盗んだバイクで走り出した。俗に言う、十五の夜ってやつだ」

「十五の夜なのは、ゆきなだけどね」

「まあ、つまりはそんなふうにして、お先にここまで来たってワケだ」言いながら、たけやんは道の脇に指をさした。そこには確かに一台の原付があった。

「それより、ここまで、よく辿り着いてくれたな――」

「……うん。でも――」私は二人の顔を思い浮かべる。「ジンさんもヒロコさんも、ゆきなを庇って犠牲になってしまったの」

「あれの視線は、今も感じるのか?」

「うーうん、今は感じないけど……」

「だったらそれがヒロコの生きている証だ。あいつはまだ上手く逃げてるよ」

 それを聞き、胸が少し軽くなった。よかった、心の底から思った。

「ありがとう……」

「なーに、あいつもそれが仕事だからな。それより、ここからが本番だ」

 私たちの目の前には、長い石の階段が現れていた。

「これを上った先に、目的地がある」たけやんは言い、石段に足を進めた。私も、黙ってそれに続いた。


 そうだ。そうなのだ。三人目の運び屋がたけやんと言うことは、もう決まりではないか。私の運ばれる理由は、私の運ばれる先は、親の依頼した場所なんだ。たけやんは仲間に仕事を託したのではなく、ただ協力を求めただけだったんだ。

「どうした? 暗い顔して?」と、たけやんは私に言ってきた。

「ううん……別に」

「そうか……」

「うん」

「ヒロコたちから何か聞いたか?」

「……うん」

「……そうか」



 気まずい空気が流れた。これ以上は言葉を交わすこともなく、二人は黙って階段をのぼっていく。そして中間地点に辿り着いた頃だった。たけやんはまた、話し始めた。


「仕事でヘマしたって話、したよな?」

「うん」私は曖昧に頷いた。もう、何もかもどうでも良いというふうに。

「このワシにもな、どうしてもできない依頼が一つだけあったんだ……」言い、たけやんは顔をこちらに向けてきた。「それが、ゆきな、お前なんだ……!」

「え?」私は首を傾げた。「どういうこと?」


「薬物だろうが、銃だろうが、死体だろうが。ワシはこれまで何でも運んできた。恥じることなく、誇ることもなく、ただ仕事だからとやってきた。そんなあるときだ。ある依頼書を受け取ったワシはなあ、同封されていたキーを持って、隣町の駅にまで行ったんだ。キーに書かれた番号のロッカーを探し、開けた。出てきたのは黒いバッグ。別にここまではいつも通りだった……」


 そう語るたけやんの声は震えていた。


「手に持った瞬間、違和感を覚えた。バッグの大きさからして銃の類かとそう思っていたんだ。でも、手にしたそれは、明らかに今まで運んできたものではなかった」


 そう言うたけやんの表情が、少し柔らかくなっていた。


「違和感が衝撃に変わったのはな、それが動いたときだった。バッグの中でそれは、突然動いたんだ……! 驚いたワシはな、つい、中を見てしまった。タブーを破ってしまったんだ」

「もしかして、それが……?」


「ああ。この世のものとは思えないほどの、可愛らしい、赤ん坊だった……」聞き、私は息をのんだ。「そう、ゆきな。お前だ――」


 たけやんはそこまで言うと大きく息継ぎをし、また続けた。


「ワシは依頼のことなんか忘れた。気が付いたらあのプレハブ小屋にお前を連れて帰っていたんだ。ワシが依頼を放棄したのは、あれが最初で最後だった……。それほどにお前の存在は、ワシにとって特別なんだ」


 私の目からは、また涙が流れていた。今日は泣いてばかりだ。


「とはいえ、流石にな、何もしないままばっくれる訳にもいかなくてな。その後、ワシはお前と依頼主の親について調べ回ったんだ……。それで色々分かったんだ」

「私は、呪いの身代わりにされようとしていたんでしょ……?」

「聞いていたのか? ああ、そうだ……。酷い親だよな、まったく。で、だ。ワシは色々と工作してだな、依頼を完遂させたとウソの報告をでっち上げたんだ。別に、金を盗み取りしたかったワケじゃない。お前を平穏無事に暮らさせるためだ……」
「っていうことは……たけやんが私を拾ったのは?」

「ああ、運びのためじゃなく、育てるためだ」



 この言葉が、聞きたかった……。私の涙腺は崩壊し、気付いたらたけやんの胸に飛び込んでいた。が、「でも、ダメだった」と、突然、たけやんは声のトーンを曇らせて言った。


「え?」


「ワシが出掛ける前にした会話を覚えてるか? あのときお前はコインロッカーの小銭拾いを立派な仕事だとか言ったな。あの瞬間、思ったんだ。ワシじゃあ、お前にちゃんとした生き方は教えられない、と。お前の親は務まらないって、な」

「そんなこと」ないよ、と言おうとした。が、たけやんは私が言うのを遮るようにさらに続けた。

「それで、ワシはな。お前の実の親に、会いに行ったんだ。お前の幸せのためには、やはり実の親しかいないと、そう思ったんだ。だが、行ってから気づいた。ワシはどうかしていた。腐っても実の親と思っていたが、腐った親は親じゃなかった……」

 たけやんは辛そうな顔で言った。

「かつての依頼主に初めて会って、ワシは全てを話した。ヘマをやらかした仕事を自分から明かしたんだ。お前を儀式の場に運ばなかったこと、その後の十五年間ずっとお前をかくまっていたこと、そして、娘であるお前を、親として受け入れてほしいこと……。
でも、ダメだった。河を渡ってしまえば呪いからは逃れられるからと言ったんだが、そいつは聞かなかった。それどころか、今度こそお前を儀式に送り出そうと……」

「じゃ、じゃあ、今向かっている場所は……?」

「安心しろ……もうワシに迷いはない。ワシがお前を救ってやる」

 そうたけやんが言い終わったとき、私たちは階段を登り切っていた。目の前に現れたのは、立派な寺院であった。

「ここはな――」と、たけやんが説明を始めた。「そもそもの始まりの場所、つまり、お前の親に呪いをかけた張本人が住んでいる場所だ」


 そう言ってたけやんはずかずかと奥へと進んだ。私はここでやっと、たけやんの真の目的について知らされた。彼は私に、力強い口調でこう言ってくれたのだ。


「呪術者に言って、呪いを解いてもらうんだ。それで初めてお前は自由になれる……!」
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